ほくろが大きくなるのは危険?良性・悪性の見分け方や治療方法について

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ふとしたときに、「ほくろが大きくなっている」と感じたことはありませんか。

ほくろの変化には、紫外線や加齢による自然なものもあれば、まれに悪性腫瘍(皮膚がん)の可能性もあります。

今回は、大きくなるほくろが危険かどうかの判断基準や、良性・悪性の見分け方、さらに治療方法や受診のタイミングについて解説します。少しでも不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。

ほくろが大きくなる原因

ほくろが大きくなる主な原因は、以下のとおりです。

原因補足
紫外線の影響紫外線の蓄積により、皮膚のメラノサイト(色素を作る細胞)が活性化することで、ほくろが大きくなることがある
特に日焼けを繰り返すとリスクが高まる
ホルモンバランスの変化思春期・妊娠・更年期など、ホルモンの変動によってほくろが大きくなったり濃くなったりする
加齢年齢とともに皮膚の新陳代謝が低下し、ほくろの変化が顕著になることがある
外的刺激衣服やアクセサリーのこすれ、繰り返し触る癖など、物理的な刺激によってほくろが大きくなる場合がある

子どもにもほくろはできますが、急激に大きくなったり形や色に変化が見られたりする場合は注意が必要です。

成長にともなう自然な変化であるケースが多いものの、まれに皮膚がんの兆候の可能性もあります。気になる変化がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

除去した方がよいほくろの特徴

ほくろの中には、医学的または生活上の理由から除去を検討した方がよいケースがあります。主な特徴は、以下のとおりです。

日常生活に支障をきたす場合

ほくろが日常生活に支障を与えている場合、除去することで快適さが向上することがあります。例えば、以下のようなケースが考えられます。

  • 衣服に引っかかったり、髭剃りやメイクの際に擦れて出血・痛みが生じる
  • 顔や首など目立つ場所にあり、ストレスやコンプレックスの原因になっている
  • 洗顔うやスキンケア時に違和感があり、日常動作が煩わしく感じている

上記のような状況の場合、良性であってもQOL(生活の質)を高めるために除去を検討する価値があります。

悪性の可能性が疑われる場合

悪性(皮膚がん)の可能性が疑われる場合は、ほくろを除去しなければなりません。放置することで治療が遅れ、命にかかわる危険性が高まるためです。少しでも異変を感じたら、早めに専門医を受診しましょう。

大きくなるほくろは危険?放置するリスクと良性・悪性ほくろの見分け方

ほくろが大きくなることが必ずしも危険というわけではありません。しかし、「短期間で急激に変化するほくろ」には注意が必要です。悪性(皮膚がん)であった場合、放置すると以下のような深刻なリスクがあります。

  • リンパ節や内臓への転移
  • 治療の遅れによる命の危険

悪性腫瘍は、早期発見・治療が極めて重要です。急激な変化が見られる場合は自己判断せず、早めに医療機関を受診しましょう。

ほくろが悪性かどうかを見分けるための目安として、以下のABCDEルールが有効とされています。

ABCDEルール補足
Asymmetry(左右非対称)ほくろの形が左右対称ではない
Border(境界が不明瞭)周囲がぼやけていたり、ギザギザしている
Color(色が不均一)黒・茶色・赤・青など、複数の色が混在している
Diameter(直径が6mm以上)大きさが拡大している
Evolution(進行性の変化)短期間でかゆみ・出欠・色・形などの変化が見られる

良性の場合でも、ほくろが大きくなることはあります。良性の場合は形や色に大きな変化がなく、成長スピードが比較的緩やかなのが特徴です。

悪性ほくろの代表例

悪性ほくろの代表例には、以下のようなものがあります。

悪性黒色腫(メラノーマ)

悪性黒色腫(メラノーマ)は、メラニン色素を生成する細胞(メラノサイト)が「がん化」して発生します。皮膚がんの中でも悪性度が高く、進行が早いのが特徴です。

特徴大きさ好発部位
悪性黒色腫(メラノーマ)黒~淡褐色左右非対称・境界が不明瞭急速に拡大する全身にできるが、特に足の裏に好発する

メラノーマは早期発見・早期治療が非常に重要です。早期であれば、手術のみで治療できる可能性が高くなります。

基底細胞がん

基底細胞がんは、皮膚がんの中で最も発生頻度が高いがんです。進行は比較的緩やかですが、放置すると周囲組織に広がるため、適切な治療が必要です。

特徴大きさ好発部位
基底細胞がん光沢のある黒~褐色ドーム状徐々に大きくなっていく紫外線に当たりやすい顔面や耳に好発する

転移はまれで、命にかかわることは少ないものの、健康面・美容面を考慮すると治療が望ましいです。

有棘細胞がん(ゆうきょくさいぼうがん)

有棘細胞がんは、皮膚の表皮にある細胞が「がん化」して発生します。基底細胞がんに次いで、発生頻度が高い皮膚がんです。

特徴大きさ好発部位
有棘細胞がん赤茶色~褐色いぼ状の硬いしこり徐々に大きくなり出血や悪臭を伴うことがある顔面・手足・瘢痕

有棘細胞がんは転移するリスクがあるため、早期の診断と除去が非常に重要です。

ほくろの大きさが気になるときの対処法

ほくろが徐々に大きくなったり、形や色に変化が見られたりした場合は、悪性の可能性も否定できません。異変を感じたときは、以下のステップで適切に対処することが重要です。

専門医の診断を受ける

最初のステップは、皮膚科や形成外科を受診することです。自己判断で放置せず、専門医の診断を受けることで、必要な治療や経過観察の方針が明確になります。

具体的には以下のような診察を行います。

診察の流れ診察内容
問診いつ頃からほくろが大きくなったのか、かゆみや痛み、出血があるかなど確認
視診肉眼で、ほくろの色・形・境界の鮮明さ・表面の状態などを確認
触診実際にほくろを触り、硬さや質感、しこりの有無を確認

必要に応じて、後述のダーモスコピーや病理検査が追加されます。

ダーモスコピー検査を受ける

視診だけでは判断が難しい場合は、「ダーモスコピー」という機器を使った精密検査が行われます。

ダーモスコピーとは、皮膚の表面を拡大し、光の反射を抑えながら皮膚の深い構造まで観察できる医療機器です。肉眼では見えない構造や色の分布を詳しく確認できるため、良性・悪性を判断しやすくなります。

目的良性・悪性の識別の精度を高める
検査時間数分程度
痛みや侵襲なし(メスや針を使用しない)

ダーモスコピーによって悪性が疑われる場合は、病理検査が推奨されます。病理検査では、ほくろの一部を採取して精密に分析し、確定診断を行います。

ほくろの治療方法

ほくろの治療方法は、良性か悪性かによって異なります。

良性の場合は、美容目的や生活への支障を理由に行われることが多く、悪性の場合は皮膚がんの一種として、迅速な診断と外科的治療が求められます。

それぞれのケースにおける代表的な治療方法を紹介します。

良性のほくろの治療方法

良性のほくろの治療方法は、以下のとおりです。

治療方法概要メリットデメリット
レーザー治療炭酸ガスレーザーやQスイッチレーザーなどを用いてほくろの細胞を蒸散・破壊する・ダウンタイムが短い
・短時間の施術で完了する
・傷跡が残りにくい
・深いほくろには不向き
・一度で完全に除去できない場合がある
・美容目的と見なされるため保険適用外
電気焼灼熱を利用してほくろの組織を焼灼・短時間の施術で完了する
・出血が少ない
・深いほくろに適していない
・傷跡が色素沈着として残る可能性がある
くり抜き法専用の器具でほくろを円形で切り抜く・局所麻酔で施術可能
・病理検査に出せる
・傷跡がくぼんで残ることがある
切除手術メスで皮膚を切開してほくろを取り除く・根本治療が可能
・再発のリスクが少ない
・ほくろの大小問わず対応可能
・傷跡が残る可能性がある
・抜糸や術後のアフターケアが必須

良性のほくろの治療は、主に見た目の改善や物理的な不快感の軽減を目的として行われます。医師が「医学的に治療が必要」と判断した場合は保険適用されることがありますが、美容目的の場合は自由診療となります。

悪性のほくろの治療方法

悪性ほくろの治療方法は、以下のとおりです。

治療方法概要メリットデメリット
切除手術がんの取り残しを防ぐため、一定の安全域を含めて大きく切除する・確実性が高い根治治療
・病理検査で確定診断が可能
・保険適用
・傷跡が残る可能性がある
・抜糸や術後のアフターケアが必須

悪性の場合は、切除術が適用されるのが一般的です。治療は美容目的ではなく、命を守るための医療行為のため保険適用となります。

まとめ

ほくろが大きくなる原因は、紫外線や加齢など自然な変化で起きる場合もあれば、皮膚がんのサインの可能性もあります。

見た目の変化や違和感に気づいたときは、自己判断で放置せず、早めに専門医の診断を受けることが大切です。早期発見・早期治療が、健康を守る第一歩となります。

「これって大丈夫かな?」と少しでも不安を感じたら、お気軽に当院にご相談ください。

院長紹介

古林 玄

日本形成外科学会 専門医
古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。